長寿命住宅のための耐久性能向上ガイド

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住宅の寿命

住宅の寿命って考えたことありますか。
アメリカは66年、イギリスは80年、フランスやドイツはもっと長いです。
そして日本はというと…32年です。

さらっと言いましたが、海外に比べて異常に短くないですか?
今回は家の耐久性を考えてみます。

建築基準法

日本の建物はすべて建築基準法に則って建築されています。
ビルや公共建築物はもちろん、住宅も然りです。

大きな地震で明らかになる部分があると改正されるのですが、1981年と2000年に改正されています。

1981年の改正は1978年の宮城県沖地震から「新耐震基準」として強化され、2000年の改正は1995年に発生した阪神淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことをきっかけに「2000年基準」として改正されました。

「新耐震基準」ですべての建物が厳格に規制されたのですが、ある一定の規模の木造住宅は4号特例という緩和措置がありました。それがゆえに1995年の大地震で倒壊したのかも知れません。

2000年基準では木造住宅にさらに規制がかかりましたが、2011年の東日本大震災では津波で建物の調査自体が出来ずに改正されず、24年経った今でも(2024年2月現在)まだその基準のまま施工されています。

国の見解

しかし、これがなんとも言えない部分でして、国が示す建育基準法では「数百年に一度発生すると考えられる震度6強から震度7程度の地震では倒壊しない建物」でなければならないとしています。

ここをもっと簡潔に言うと、「震度7の地震が1回発生しても倒壊しない」になります。

数百年に一度の想定ですから何回も発生することは考えておらず、すぐ2回目が発生したり、津波が来ても倒壊しない家は初めから想定していないのです。

「1回目の地震ですぐ逃げてください、そうすれば命は助かります。国に出来ることはそこまでですよ。」という解釈になります。

そもそも定義が違うことを私たちは理解しなければなりません。

耐震等級

基準法で定められた強さを持った建物を耐震等級1、その1.25倍の強さの建物を耐震等級2、1.5倍の強さの建物を耐震等級3と言います。

木造住宅には「4号特例」という逃げ道があって本来であれば許容応力度計算をするべきなのですが、壁量計算で耐震壁の量の計算とそのバランス、N値計算するだけで1.5倍の強さにすることが可能です。

いわゆる「耐震等級3相当」の建物です。

図のビラミッドで、底辺の「仕様規定」のところです。ほとんどの住宅はここに当たります。
頂点の「構造計算」の部分が許容応力度計算がされた建物で、安全性は高いが建っている住宅棟数は少ない(住宅の営業マンも知らない人が多い)のです。

警察署、消防署、公民館、などでは計算が必須にされていて、「災害時の避難所」として安全な建物になります。
個別に検討する項目のところで「4号特例」との差がどれだけあるかお分かりになると思います。

耐久性のない外壁

赤丸はシーリング(コーキングとも言います)の劣化です。サイディングは熱によって伸縮します。
それに追随して躯体の中に雨を入れないようにするためにこのシーリングを打ちます。

しかし、寿命が5年~10年という短い期間で硬化してしまい、写真のようになってしまいます。
こうなると雨が降るたびに中に雨が入っていきます。

これに対して、透湿防水シートが貼ってあるから通気層を通って雨は下に逃げるよ。という監督もいます。

ところが! 見落としている部分があります。それはサイディングの裏側です。
表は塗装もしてあるし、フッ素やガラスコーティングgあ施されている高級な部材もあります。

しかし、裏側は素地そのままです。ここに雨が入るとその雨を吸ってどんどん劣化が進んで行きます。

冬場に吸った水分が凍って膨張を繰り返すと割れることもあります。

緑丸の写真は釘の穴から水分が入って素地が割れた状態になっています。

黄丸の写真はおそらく北面だと思いますが、横貼りのサイディングの水はけが悪く、ずっとジメジメした状態が続いてカビ(もしくは藻)カビが生えてしまったのかな、と思います。

躯体の劣化

床下の空間は普段見ることがない部分になりますが、施工が不十分だといつの間にか白いカビだらけになっていたり、シロアリ天国になっていたりします。

玄関やお風呂など水回りの近くの柱も、リフォームなどで壁をめくると柱がスカスカになっていたり、ひどいときには柱が空中に浮いてるなんてこともあります。


この原因は湿気に尽きます。
ベタ基礎、高気密住宅で気をつけなければならないのが、床下の換気です。

柱が腐るのもだいたい下からです。原因はわかるのですが、対策が分からないという住宅会社が結構の数います。

現に床下がカビてしまって訴訟問題になっている工務店があります。
床を構成している土台や大引きは簡単に取り換えることができません。

柱も同じです。一本の柱の上下は「ホゾ」といって下の土台と、上の梁に刺さっていますし、外壁の下地からも釘やビスが打ってあります。

簡単に切って入れ替えられるものではありません。

床下の換気について、建築会社さんの意見を聞いて反応を見てくださいね。

耐震で安心を確認するための質問

「耐震の計算はどちらの計算ですか?」

見解

住宅の寿命が32年ということは毎世代家を建てるということです。

私が大工時代にお世話になった方は20年前に買った建売の自宅を建て直しするということで3階建ての建築をさせて頂きました。20年で建て直さなくてはならない住宅ってどんなのなんだろう?って当時思っていました。

海外ではおじいさんが建てた家はお父さんが自分でメンテナンスをして、子供が受け継いで住むのです。

そしてその子供の子供(おじいさんから見たらひ孫)が大規模修繕をするか建て直すかで、大きなお金が動くのは60年~80年に一度なのです。日本では毎世代、生命保険と引き換えに住宅ローンを組んで必死に返済しています。

本当の豊かさはどちらだと思いますか。
お金がすべてだとは言いませんが生活にお金が使える方を私はお勧めしたいです。

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この記事の執筆者

小浦義一 こうらよしいち

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名古屋市の建築会社 夢工房キッチンくらぶ代表 1971年生まれ。
大工にてキャリアをスタートし大手ハウスメーカー設計の住宅を数多く手掛ける。
図面に忠実に、そして技術的に無駄が無い。ことを心情とし建築家設計の難解な住宅の施工も担う。手掛けた案件が新建築に掲載された実績もあり。

会社設立後は全てのお客様の図面、線一本にも責任を持つことを掲げ、一棟一棟、熟練の職人とともに年間受注棟数を限定しながら、高断熱・高気密・高耐震、そして自然素材を主とした健康で安心して永く住み続けられる住みやすい住宅を提供している。

主な資格は、二級建築士、住宅断熱アドバイザー、住宅断熱施工技術者、第二種電気工事士 宅地建物取引士 など

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