パッシブの意味
「パッシブ」は辞典で調べると、「受動的な」「消極的な」などを表す形容詞と出てきます。
ちなみに反対語は「アクティブ」です。
建築用語としては、太陽の光や自然の風、気温の変化、地熱などの自然エネルギーを利用する設計手法です。
「パッシブなデザイン」「パッシブな家」というふうに使われています。
数年前に大型台風により2週間程停電が続いた時に、「2階が蒸し風呂の様で上がれません」とか、冬の豪雪による停電では「家の中は寒いから車で暖を取っています」というニュースがありましたが、もちろん災害時だけではなく、毎日の生活でなるべく電気に頼らずに快適に暮らすために自然の力を最大限に利用し、結果それが省エネルギーに寄与するという考え方です。
5つのデザイン
パッシブデザインを考えるうえで、次の5つの項目が重要になります。
「保温(断熱・気密)」「日射遮蔽」「通風」「昼光利用」「日射熱利用暖房」です。
保温(断熱・気密)
外気の温度に左右されないためには、しっかりと保温することが必要です。
設計で、逃げる熱・入ってこようとする熱を計算します。
そして施工では、空気が勝手に出入りしないように隙間を極力少なくするために丁寧な仕事をすることが必要です。
日射遮蔽
屋根や壁に比べて、窓は熱の出入りが激しい部分になります。
日光は入れたいが夏の日差しは遮りたい。
この相反した願いを叶えるためには、季節による太陽高度の違いを考えた手法が必要になります。
通風
自然風利用ともいいます。
1つの窓を開けただけでは風は流れませんから風が入る窓、出ていく窓を家の対角線上に配置します。
風は季節によって流れる方向も変わりますから風を捉える窓(ウインドウキャッチ)も必要になります。
空気は熱せられると軽くなりますので、1階の窓から2階の窓へ流れるように上下に配置します。
間取りによってどの手法が使えるか、引出しの多さが明暗を分けます。
昼光利用
季節によって違いはあるだろうけど、「太陽が出ている時間帯であれば、電気を使わずに生活がしたい。」と思いますよね。
窓の数はもちろん、大きさや高さが重要になります。
窓から入る光を楽しみたいという意見もあります。
窓から入った光が白い壁を優しく照らす時間帯や、床に影を落としてその影が太陽の動きと共に動く様子など、光の色の形も様々です。
そうした空間を感じさせるふとした時間も光が演出してくれます。
日射熱利用暖房
冬の太陽は夏に比べて高度が低いので、家の奥深くまで日の光が注ぎます。
その陽の光が床や壁に熱を与え、陽が沈むまで熱を与えます。
その後輻射熱で自然に優しい温かさが感じられます。
最も重要なのは窓
上の5つの項目のうち3つに関係しているのが窓です。
日射しを遮ることと部屋の明るさと、そして冬の暖房です。
光を、夏は遮り冬は取り入れるって真逆のことですよね。
自由に位置は変えられませんから、いかに設置する窓の性能と位置が重要かが分かりますね。
重要だがしかし…
窓がたくさんあれば良いわけではないことはお分かりかと思います。
窓には太陽光と風を家の中に取り入れるためと、家の中から見える景色や空を取り込むという役割もあります。
くつろぐ場所、集中する場所にはそれ相応の窓が必要になります。
窓が無秩序にバラバラあって外からの見られる外観が見苦しくなることは避けたいものです。
そして、耐震上の構造も重要です。
耐力壁が必要な箇所に窓は設けられません(これについては奥の手はありますが…)。
これらのことを踏まえると、窓の性能はとても重要で、いくつもの理由があって、その大きさのものが、その位置に、その高さで取り付けられているのです。
それらのことを踏まえて窓の計画を立てないといけませんので、理論的な知識とある程度の経験がないと難しい分野ということです。
それができた時には満足度の高いお家になりますよ。
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この記事の執筆者
小浦義一 こうらよしいち
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名古屋市の建築会社 夢工房キッチンくらぶ代表 1971年生まれ。
大工にてキャリアをスタートし大手ハウスメーカー設計の住宅を数多く手掛ける。
図面に忠実に、そして技術的に無駄が無い。ことを心情とし建築家設計の難解な住宅の施工も担う。手掛けた案件が新建築に掲載された実績もあり。
会社設立後は全てのお客様の図面、線一本にも責任を持つことを掲げ、一棟一棟、熟練の職人とともに年間受注棟数を限定しながら、高断熱・高気密・高耐震、そして自然素材を主とした健康で安心して永く住み続けられる住みやすい住宅を提供している。
主な資格は、二級建築士、住宅断熱アドバイザー、住宅断熱施工技術者、第二種電気工事士 宅地建物取引士 など
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